
2015
10/02
15:59
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Gilles et Catherine VERGÉ
Category : ワイン
トスカーナ、コート・ダ・ジュール、プロヴァンスを省略してマコネー地区のヴィレです。
今回もっとも会ってみたかった生産者ジル・ヴェルジェです。
何故かと言うとこの生産者のワイン、私にとってはとても難しいワインです。
最近は少しづつ理解できるようになったのですが
出会った頃はどのようにサーブしていいか分からなかったです。ほんとうに難しかったです。
ばっちり決まったときは唯一無二の物凄い感動をあたえてくれるワインです。
もちろん、理解しやすいヴィンテージのワインもあります。05,09など。
でも、サーブする側の技量が必要なワインだと思います。04や07はそう思います。
毎日、ボトルの中のワインの状態を観察して、今の状態を想像して
ワインに合わせてサーブしてあげる必要があると思います。
抜栓時間や温度の管理は当たり前ですが
それ以上の注意深く観察する必要があるとワインだと思います。
この人のワインと向き合っていると昔のソムリエの仕事が想像できます。
毎日毎日たくさんのワインを注意深く観察し状態を確かめる必要があるワインが多かったと思います。
ソムリエの仕事はワインをサーブする以前のワイン管理が大切だと感じます。
サーブの技術は勉強すればある程度はできますが、ワイン管理はセンスと観察力だと思います。
ワイン作りも同じだと思います。畑をよく見て、よく観察して育てた葡萄がつくれたなら
あとは少しの醸造センスでいいワインが出来ると思います。
作っている時もよく見てあげることが大切ですが。
彼のワインは科学や工業的な技術のなかった時のワインを感じます。
昔は彼のような作りをするワイン生産者ばかりだったと思います。
どんな人かとても興味がありました。
私がどのように彼のワインをサーブしていいか知りたかったです。
会えば何か感じられると思いました。
だから会いたかったです。
私はビオだとかビオデナミとか詳しく正確に説明はできませんが
作り手がどんな思いで、どんな考え方で取り組んでいるかが大事だと思います。
思いや考えがあってのヴァンナチュールならいいと思います。
ビオだとか自然派だとか言うまえに本質を見てもらいたい。
彼はLes vins S.A.I.N.S.(Sans Aucun Intrant Ni Sulfite)に属しています。
二酸化硫黄をまったく使わずに健康的にワインを作るワイン醸造家たちです。
S.A.I.N.S.には私がお客様によくお勧めするjean-Pierre Robinot,Joel Courtault,Jean-François Chene
Domaine Lous Grezesなどが属しています。
私はこのS.A.I.N.S.を知らなかったですが、飲むと何か共通するものを感じると思います。
あとから私はこのグループを知りました。
うちのお店にたまに来る方ならば彼らのワインを飲んでいると思います。
私もおいしいと思っているし、飲んだお客様もいいと感じてらっしゃると思います。
彼らは芯のある生産者たちだと思います。
まだ飲んだことのない方は一度いらしてくださいね。
うちにはジルのワインは日本に入荷しているものなら、ほとんど有ります。
息子のジャン・マリーが作ったガメイのワインもありますよ。
けっして安いワインではないですが、それだけの価値のあるワインだと思います。
私がベストの状態でサーブできれば必ずおいしいと思っていただけると思います。
よかったら試してみてくださいね。
ビュル・ア・ゼロ2012 8000円
発酵の途中に瓶詰め。その後の発酵が瓶内で続き、その泡を閉じ込めたもの。
なので一本一本状態が違います。酵母が活発なら辛口で発砲も強く
そうでなければ、甘みが残り泡も優しくなります。開けてみないと分かりませんが、だいたい後者です。
マコン・ヴィラージュ2007 5900円
この年はシャープな酸が特徴的な年です。このような年こそ彼のブドウの良さがわかります。
早めの抜栓でたくさん空気と触れさせゆっくり飲んでいただきたいです。
ヴィッレ・クレッセ・ブレーズ2008 6200円
ブレーズはヴェルジェ家の最上の畑レ・カーのとなりの畑です。
石灰岩質でやや貝殻や粘土の多い土壌です。
引き締まった硬いミネラルを感じるピュアなイメージです。
VDFヴィエイユ・ヴィーニュ2009 7200円 2010 8000円
1885年に植えられた樹から収穫されたブドウで作られています。一つの樹に3~5房しかつきません。
ブレーズ、レ・カーに比べ粘土が多く平らな土壌のためか酸味が控えめで丸みのあるワインです。
完熟ブドウからくる蜂蜜、優しい酸がワインの骨格を整えています。
ジルのワインを飲んだことのない方には、このワインをお勧めします。わかりやすく美味しいです。
VDFラ・モンターニュ2005 8200円
ヴィレ村の標高300mほどの山の上にある畑です。ジルのワインは抜栓してから時間が必要ですが
ラ・モンターニュは抜栓直後から楽しめます。初めての方にも楽しんでいただけると思います。
素晴らしい年のワインです。ゆっくり楽しんで。
VDFレ・カー2005 14400円
ヴェルジェ家の最上キュベです。より粘土の少ない石灰岩土壌の畑です。特に素晴らしい畑です。
醸造法は他のキュベと同じですが、葡萄の素直な味わいに力強さも加わり、
長熟で偉大なワインを感じます。
通常ならばViré‐Clessé Cotequx des Quarts(ヴィッレ・クレッセ コトー・デ・カー)ですが、
テーブルワインのためL'ecart(外れもの)になっています。
他にもレ・バレイズ2010やエルヴェ・オ・グラン・エール2006などもあります。
ほとんどのジルのワインは酸化防止剤を使用せず、澱引きも一度もされず、
酸素とのコンタクトも最小限にして熟成される彼のワインは瓶詰までに長い時間を必要とします。
瓶詰が早いとそのワインは安定せず味わいが変化することがあります。
昔の自然なスタイルのワインを追求している生産者は「ワインの熟成中にはいろいろな時期があり、
ワインは変化し続ける。その変化は時とともに落ち着いてくる。その時期を待つことが出来なければ
熟成中の澱引きなど、何らかの対処が必要となる。その際の過度な酸化、
ワインの移動はどうしてもストレスを与えるし、酸化防止剤も必要となる」
「本来のワイン作り、ワインを尊重するには2年」といいます。いまの生活からして2年は長いです。
ジルのワインはブドウの果皮、茎のない状態での発酵、タンニンなど色素のない状態での熟成と、
白ワイン作りに於いて酸化防止剤なしに安定したワイン作りをすることは
一般的には不可能とされていることです。
ジルは木樽熟成したものでなく、ブドウの果実とテロワールを純粋に表現したものが
自分のワインと言っています。
木樽は使わずにホーローの20hlの小さなタンクでおこなっています。
樽熟成であれば空気とのコンタクトもあり、ワインの状態はよりなじんできますが、
まったく空気と遮断された状態での熟成はより時間を必要とします。
彼はこの難しいスタイルを承知で自分の考えを正しいと信じてかたくなに追求しています。
彼の醸造法はどのワインもほとんど同じですが、キュベごとに違いをすごく感じます。
テロワールからきていると思います。それぞれ特徴的で素晴らしいものばかりです。
一度でも飲んでいただきたいワインです。
ジルは物静かで大きな声では話さないですが、私にわかるように一生懸命いろいろ伝えてくれました。
デギュスタシオンの仕方から、そのワインの特徴やマリアージュについて
時間を惜しむことなく接してくれました。
会うまでは体の大きな方だと想像していましたが、小柄で優しい魅力的な方でした。
マコネー地区ヴィレ村は、華やかで偉大なコート・ドール地区と北ローヌ川流域に
挟まれた素朴な地域です。
しかし、生産者の想いひとつで素晴らしいワインが出来上がることがわかりました。
これからもジルのワインを扱えるようなソムリエでいたいし、恥ずかしくないお店でありたい。